ink gallery

248-0031
鎌倉市鎌倉山1-19-12
MAP
展示期間中だけオープンします。

駐車場がありませんのでお車でのご来場はご遠慮ください。

鎌倉駅から
鎌4 鎌倉山行
鎌5 諏訪ヶ谷行
鎌6 江ノ島行
若松下車 徒歩5分

北鎌倉駅から
タクシーで約15分

平澤まりこ展

2023. 11/3 fri. – 11/12 sun.
11 a.m. – 6 p.m.

毎朝の散歩をしているとき、ふと
新しい季節がはじまった、という気がする日がある。
はたまた旅をしているとき
この土地とはなんだか相性が良い気がする、

と思うことがある。
日常のなかで〝そんな気がする〞ということは案外あって
私はけっこうそれを当てにして生きている。

根拠もなければ、目に見えるものでもないから
気のせいと言われればそれまでだけれど、
この内なるレーダーの精度はなかなかだ。

世の人々の暮らしが
がらりと変わったあの頃から
私は作り出すものが変わった。

どうか心平らかに日々を送れますよう、と
小さな祈りのような気持ちで
紙に、土に、向かうようになった。
それがいま必要な気がしたから。

生み出したふくよかな馬や女性たちは
大らかにそこに在り、
そっとこの世界に寄り添ってくれる気がするのだ。

今回は、近年制作している描版画に加え、
陶作家 安藤雅信さんのご協力のもと
陶製の立体作品に挑み、
大好物であるサヴールのバターケーキのための
大皿と小皿も作らせていただいた。

鎌倉山の心地よい秋風とともに
皆さまに愉しんでいただければ幸甚にございます。

平澤まりこ

Glass Tableware in Still Life

2023. 10/21 sat. - 10/29 sun.
11 a.m. - 6 p.m.

「静物画の中のガラス食器」と題したこのプロジェクトは、
グラフィックデザイナーの須山悠里さんから、私のガラス作品の本を作りませんか、
と声をかけて頂いたことから始まりま した。10年以上前のことだったと思います。

そこからなんとなく、「本」を作ることを意識 し始めたのですが、
「本 」という形で機能あるガラス食器を残す意味を見出せずに過ごしていました。

そんなある時、自分がいつもガラス食器にばかり気を取られて
生活をしていることに気づきました。家族との食卓や友人との大切な食事会、
旅先のバーやレストランはもちろん、ネットの討論会やテレビのニュースまで。
そして、子供の絵本や小説の一説、 流行らなかった映画や古びた絵画の中にも、
未だに割れずに残る美しくも不思議なガラス食器たちを見つけては 、
とても羨ましく思っていたのです。

そんな自分の癖からヒントを得て、
18名のアーティストたちに彼らが描きたいガラス食器を言葉で説明 してもらい、
そのリクエストに応じて制作したガラス食器を静物画に描いてもらうことに しま した。
スウェーデン、ドイツ、日本を拠点にするスタイルのさまざ まなアーティストにお願いし、
彼らの個性や生活環境が影響するガラス食器を、各アーティストごとに表現 しました。
フ ォトグラファーの三部正博さんが、アーティストたちのアトリエに佇む
そのガラス食器と描かれた静物画を撮影し、
須山さんと共にアートブックを作ることが実現しま した。

いつか私たち作り手がこの世に存在しなくなって、
ガラス食器も割れてしまったとしても、
きっと本の中のガラス食器はずつと残るだろうと期待しました。
作り手の思惑とは別にそのガラスを見た誰かは、
その時その人の環境で、自由気ままに思考を膨らませることでしょう。
そんなふうに、想像すら難しいことを想像しようとするだけで、
小さな自分の世界が少しだけ広がったような気がするのです。


2023年9月 ストックホルムにて
山野アンダーソン陽子